アマメハギを寄せ付けない武術稽古と生活

八光流柔術東京武揚会のブログにお越しいただき、ありがとうございます。

代表の、八光流柔術免許皆伝師範・理学療法士・中級妖怪博士の今野芳山です。


​私のこのいささか奇妙な、しかし私にとっては大真面目で有機的に結びついている「三つの顔」。


一見すると、伝統武術、現代医療、そして伝承文化と、まったく異なるジャンルのように思えるかもしれません。


しかし、これらは「人間の身体」と「心」、そして「地域や自然との調和」という一本の軸で美しくつながっているのです。


​今回は、能登半島などに伝わる国の重要無形民俗文化財の来訪神行事であり、妖怪好きの私にとっては大好物である「アマメハギ」をテーマに据え、八光流柔術の身体操法、そして理学療法士としての考えを織り交ぜながら、奥深い世界をご案内いたします。


​妖怪と武術と医学が交差する不思議な時間をお楽しみください。


​1. 「アマメハギ」とは何か?――怠惰を戒める恐怖の来訪神


​まず「アマメハギ」とは、石川県能登半島の輪島市や能登町などに伝わる冬の伝統行事です。


秋田の「ナマハゲ」の親戚のようなもの、と言えばイメージしやすいでしょうか。


囲炉裏にばかりあたっていると、手足に「アマメ」と呼ばれる火だこ(温熱性紅斑)ができます。


これは怠け者の証拠とされ、アマメハギの神々(妖怪)は、その「アマメを剥ぎ取りにくる」という恐怖の来訪神なのです。


​「怠けてばかりおると、アマメを剥ぎ取るぞ!」


​仮面をつけ、藁の衣装をまとった異形の者たちが包丁を手に家々に押し寄せ、子どもたちを泣かせ、怠け者を戒める。


現代ではあまり子どもたちを怖がらせるのは如何なものかという議論もありますが私的には伝統は伝統として残すべきという考えです。


​この「アマメハギ」という現象を理学療法士の目で見ると、極めて合理的で、現代の健康科学にも通じる深い智慧が隠されていることに気づかされます。


​2. 理学療法士の目:アマメハギが警告する「座りすぎの恐怖」と医学的エビデンス


​「囲炉裏(あるいはコタツ)にばかり当たって動かない」というのは、現代で言うところの「長時間座位(座りすぎ)」そのものです。


​実は、近年のリハビリテーション医学や公衆衛生学において、この「座りすぎ」は「Sedentary Behavior(座位行動)」と呼ばれ、健康リスクとして世界中で問題視されています。


​長時間座位がもたらす医学的リスク


​下肢の静脈鬱血と血栓リスク: 椅子やコタツに座りっぱなしで下腿(ふくらはぎ)の筋肉を動かさないと、第二の心臓と呼ばれるふくらはぎの「筋ポンプ作用」が働きません。


これにより下肢の血液循環が著しく滞ります。


​代謝の低下とインスリン抵抗性: 座っている間、人間の身体で最も大きな筋肉である大腿四頭筋や臀筋群の電気的活動はほぼ「ゼロ」になります。


これにより血糖値のコントロールが悪化し、糖尿病や脂質異常症のリスクが跳ね上がるのだそうです。


​ロコモティブシンドローム(運動器症候群)の加速: 関節は動かさないと滑液(潤滑油)の分泌が減り、周囲の軟部組織が拘縮(こうしゅく)します。


つまり、身体がどんどん「固まって」しまうのです。


​アマメハギが剥ぎ取ろうとする「アマメ(火だこ)」は、単なる皮膚の火傷ではありません。


それは、長時間同じ姿勢で熱源のそばから動かないという極端な「座位行動」が皮膚に刻み込んだ、身体機能低下への警告サインなのです。


​昔の人は、最先端の解剖学や生理学を知り得ませんでした。


しかし、冬場に動かなくなることが人間の生命力をどれほど奪うかを経験的に知っていたのでしょう。


だからこそ、「アマメハギ」という異形(妖怪)の力を借りて、怠けてはいけないぞ!と人々を立ち上がらせ、身体を動かさせようとしたのかもしれません。


​3. 八光流柔術の目:アマメを誘発しない「脱力」と「経絡」の身体操法


​さて、ここで「八光流柔術」の登場です。


​八光流柔術は、力に頼らず、相手の攻撃に対して無造作に瞬時に制する護身の武術です。


その根底にあるのは「挑まず、逆らわず、傷つけず」という精神と、東洋医学の「経絡(けいらく)」の智慧です。


​アマメハギに象徴される「怠けて動かない身体」は、八光流においては最も忌むべき状態です。


なぜなら、身体に「力み」や「滞り」がある状態では、八光流の技は絶対に掛からないからです。


稽古は道場のみ行うものではありません。


生活の中で仕事の中でも幾らでも稽古が行える様に型稽古の中で身体の使い方を学んでいます。


生活や仕事でも稽古をしている方ほど道場での稽古がどんどん進んでいき姿勢が良くなり内部の張りが強靭化、竹のようなしなやかさと強さを身につけられるのです。


八光流の技は、相手の関節を力任せに極めるものではありません。技の極めには、必ず「経絡」の刺激が伴います。


「感覚受容器(メカノレセプター)への急速な入力」および「神経反射(侵害反射や至適緊張の誘導)」が含まれていきます。


​力んで踏ん張っている相手(=アマメハギに怯えてガチガチになっている状態)は、筋肉が共収縮(主動作筋と拮抗筋が同時に緊張すること)を起こしています。


この状態は、エネルギーの無駄遣いであり、外力に対して非常に脆く居着いている状態です。


​一方で、八光流が求める「適切な脱力」の状態は、骨格で正しく重力を支え、筋肉はいつでも動ける「最適な緊張」を保った状態です。


アマメハギに狙われるような、コタツで丸くなっている姿勢(骨盤後傾・胸椎後弯)は、脊椎の自然なS字カーブを崩し、大腰筋などのインナーマッスルを萎縮させます。


​八光流の基本姿勢である「正立、佇立」や「正座」は、深層筋を活性化させます。


この姿勢を維持するだけで、現代医学で言うところの「NEAT(非運動性熱産生)」が高まり、座りっぱなしによる代謝低下を防ぐことができるのではないかと思います。


​つまり、正しい身体操法を身につけていれば、身体の巡りは常にサラサラへ。


アマメ(火だこ)ができる隙がなくなるかも?


アマメハギが東京武揚会の道場にやってきても、私たちの健全な足腰と、綺麗に伸びた背筋を見て、「ここには用はないな」と苦笑いして帰っていくことを願いつつも妖怪好きとしては一度お目見得を願う方が強いかもしれません。


​4. 妖怪・医学・伝統武術の交差点:現代社会の「アマメハギ」に抗うために


​私たちは今、歴史上最も「殆ど歩かなくても生きていける」時代に生きています。


デスクワーク、スマホの凝視、移動手段の発達。現代人は誰もが、年中コタツに入っているような「21世紀型アマメハギ予備軍」です。


​理学療法のエビデンスは、「30分に一回は立ち上がり、数分間動くことで、死亡リスクや心血管疾患のリスクが有意に低下する」ことを示しています。


​もし、あなたが日々の仕事で「身体が重いな」「肩や腰が凝り固まっているな」と感じたら、それは現代のアマメハギが、あなたの背後に忍び寄っている証拠かも。


包丁を持った赤や青の鬼が、あなたの「心の怠惰」と「身体の滞り」を剥ぎ取りにきているのです。


​そんな時こそ、八光流柔術の智慧が生きてきます。


​私たちの道場(東京武揚会)で行う稽古は、単に相手を投げる・抑える技術の習得だけではありません。


​己の身体のどこに「力み」があるのかを感知する(自己受容感覚の研ぎ澄まし)

​相手の力を受け流すことで、心の緊張も解きほぐす(自律神経の調整)

​経絡を刺激し合うことで、全身の気血(血液・リンパ液)の循環を促す(微小循環の改善)

​これらはすべて、現代医学が証明する「心身の健康増進」のプロセスと言っても過言ではないと思います。


中級妖怪博士として、日本の伝統文化や妖怪伝承の中には、私たちの先祖が遺してくれた「生き残るためのバイオロジー」が凝縮されています。


​東京武揚会で「アマメ」のない、しなやかな身体を


​アマメハギという妖怪伝承が教えてくれる「動くことの大切さ」。


理学療法が科学的に証明する「座りすぎのリスクと循環の重要性」。


そして、それらを日常の所作と護身の技として体現する「八光流柔術」。


​これらはすべて、私の中で一つの円としてつながっています。


​「最近、運動不足だな」「身体の芯からの脱力を体験してみたいな」と思われたなら、ぜひ一度、八光流柔術東京武揚会の門を叩いてみてください。


​包丁を持ったアマメハギに追いかけられる前に、自らの意志で立ち上がり、しなやかで強い、そして何より「健やかな」身体を一緒に作っていきましょう。


道場では、医学的根拠に基づいた身体の使い方から、時にはちょっとマニアックな妖怪の裏話まで、皆さんと楽しく共有できる時間を用意してお待ちしております!!