
八光流柔術 東京武揚会へようこそ。
当道場で指導を行っております、師範の私ですが、実は道場の外では「理学療法士」として人間の身体を解剖学・生理学的に分析する仕事をしており、さらに夜な夜な古今東西の怪異を楽しむ「中級妖怪博士」という、少々変わった三足の草鞋(わらじ)を履いております。
一見すると「武術」「医学」「妖怪」はバラバラの世界にあるように思えるかもしれません。しかし、これらはすべて「人間の心と身体の営み」という一つの軸で美しくつながっているのです。
今回のテーマは、現代人の誰もが悩まされる国民病「肩こり」です。
この厄介な同居人について、医学、武術、そして妖怪の3つの視点から、その正体と解消へのアプローチを紐解いていきましょう。
1. 妖怪の仕業? 肩に居座る不気味な影の正体
まずは「妖怪博士」としての視点からお話しさせてください。
昔の日本人は、身体に原因不明の痛みや重だるさが生じたとき、それを「妖怪の仕業」と考えました。現代のようにレントゲンやMRIがない時代、目に見えない肉体の不調をキャラクター化することで、その恐怖と付き合おうとしたのです。
肩こりにぴったりな妖怪といえば、新潟県などに伝わる「おばりよん」(または「おんぶおばけ」)でしょう。
夜道を歩いていると、茂みから「おばりよん(おんぶしてくれ)」と声がして、突然おんぶを要求してくる妖怪です。怪訝に思いながらもおんぶしてやると、最初は赤ん坊のように軽いのですが、歩き進めるうちに、まるで鉛か大きな岩のようにずっしりと重くなり、歩けなくなってしまうといいます。
現代の皆さんも、これと全く同じ経験を毎日していませんか?
朝、布団から起きたときはそれほどでもないのに、デスクワークを始め、パソコンの画面を睨みつけ、夕方になる頃には、まるで肩の裏側に「おばりよん」がへばりついているかのように、肩が鉄板のように重くなる……。
そう、「現代の肩こり」とは、まさに私たちは日常の中で、目に見えない「おばりよん」を背負い続けている状態なのです。
では、なぜこの妖怪は夕方に向けて、どんどん重くなっていくのでしょうか。その謎を解き明かすために、次は「理学療法士」の虫眼鏡で、その正体を解剖してみましょう。
2. 理学療法の眼:なぜあなたの肩に「おばりよん」は取り憑くのか
理学療法士の視点から言えば、肩こりの主犯格は「筋肉の持続的な緊張」と「微細な血流不全」です。
特に影響を受けやすいのが、首の後ろから背中にかけて広がる「僧帽筋(そうぼうきん)」や、首と肩甲骨をつなぐ「肩甲挙筋(けんこうきょきん)」といった筋肉です。これらの筋肉は、実は絶えず大仕事をこなしています。人間の頭の重さは体重の約10%(5〜6kg、ボウリングの玉ほど)もあり、それを支えているのが首や肩の筋肉だからです。
「揉んでも治らない」の落とし穴
多くの人が肩こりを感じると、その部分をグイグイと強く揉んだりマッサージしたりします。一時的には気持ちよく感じられますが、翌日にはまた元に戻っている、あるいは「揉み返し」でさらに硬くなってしまった、という経験はありませんか?
それもそのはず。肩の筋肉が硬くなっているのは、そこが「被害者」だからです。「真犯人」は別の場所に隠れています。
医学的に見て、肩こりを引き起こす最大の原因は以下の2つです。
体幹(肚・ハラ)の支持性の低下
骨盤が後ろに倒れ、背中が丸まる(いわゆる猫背)になると、頭が体幹よりも前に突き出します。すると、頭を支えるために首や肩の筋肉が引き伸ばされながら緊張し続けなければならなくなります。つまり、土台である「肚(はら)」が機能していないため、肩がそのツケを払わされているのです。
末梢(手・腕)の無駄な力み(運動連鎖)
スマートフォンの操作やパソコンのタイピング時、私たちは無意識のうちに指先や手首、肘に強い力を入れています。人間の身体は、末梢が力むと、その緊張が腕を伝ってダイレクトに根元である肩や首へと伝播する仕組み(運動連鎖)を持っています。
手元が力めば力むほど、肩の「おばりよん」はその体重を増やしていくのです。
3. 八光流柔術の智慧:「力抜(ちからぬき)」と「おばけの手」
八光流柔術の最大の特徴は、「挑まず、逆らわず、傷つけず」という理念にあります。相手の力に対してこちらも力で対抗するのではなく、自らの力を徹底的に抜く(脱力する)ことで、相手の攻撃を無力化し、最小限の力で相手を制する武術です。
この八光流の「脱力」の技術こそが、現代人の肩こり=「おばりよん」を退散させるお品書きとなります。
当道場のカリキュラムにおいて、入門して最初に徹底的に叩き込まれるコアな要素があります。それが、手首や指先の無駄な緊張を完全に解放する「おばけの手」という身体感覚です。
「おばけの手」がもたらす驚異の脱力効果
幽霊や妖怪の「お化け」がだらりと手を下げている姿をイメージしてみてください。手首から先が完全に脱力し、指先まで何の力も入っていない状態です。
相手に手首を掴まれた際、こちらが指先や手首に力を入れて抵抗しようとすると、その緊張が肩に伝わり、自分の身体の動きがロックされてしまいます。それだけでなく、こちらの力みが相手に伝わり、相手もさらに強い力で抵抗してきます。
しかし、ここでこちらの指先をフワッと「おばけの手」にするとどうでしょう。
末梢の緊張が消えた瞬間、運動連鎖によって肩の力が一瞬で抜けます。自分の肩の力が抜けると、相手は「手応え」を失い、こちらの動きを察知できなくなります。その状態から、自分の「肚(重心)」の移動をわずかに伝えるだけで、巨漢の相手であっても、まるで魔法のように崩れ落ちてしまうのです。
これは武術の不思議なテクニックのように見えますが、前述した理学療法の理論と合致しています。
末梢(手首・指先)の力を抜くことで、中枢(肩・首)の緊張を解く。現代の解剖学や運動生理学が証明するずっと前から、経験則と身体知覚によってこの真理に到達していた事は驚きです。
4. 経絡(けいらく)と身体のつながり
さらに、八光流柔術は東洋医学の「経絡」の思想を技の根幹に取り入れています。
八光流の技の多くは、相手の手首などにある特定の経絡(ツボの流れるライン)を優しく、しかし的確に刺激することで、相手の脳へ「これ以上動くと危険」という信号を送り、抵抗を奪います。
肩こりに関連の深い経絡に「三焦経(さんしょうけい)」や「小腸経(しょうちょうけい)」があります。これらは薬指や小指から始まり、腕の外側を通って、まさに肩こりの特等席である僧帽筋や肩甲骨のまわりへと繋がっています。
デスクワークでマウスを握りしめ、薬指や小指のラインが緊張し続けると、この経絡のエネルギー(気血)の流れが滞り、肩に強烈なコリをもたらします。
八光流の稽古の中で、お互いに手首を掴み合い、正しい角度と脱力で技を掛け合うことは、実はお互いの滞った経絡を刺激し、全身の気血の巡りを良くする極上のコンディショニングにもなっているのです。
稽古が終わった後、門下生たちが「なんだか肩がすっきりして、目がパッチリ開くようになりました!」と笑顔で帰っていくのは、決して気のせいではありません。
5. 「肚(ハラ)」を据えて、妖怪を退散させよう
理学療法が教える「土台(体幹)の重要性」と、八光流柔術が求める「肚(重心)の意識」。これらは表現こそ違えど、全く同じことを言っています。
肩こりを根本から解消するために必要なのは、肩を揉むことではありません。
「手元の力を抜き(おばけの手)、重心をドッシリと下腹部(肚)に落とすこと」です。
背中が丸くなり、頭が前に落ちているときは、あなたの意識は頭(思考)や手元(スマホ・PC)ばかりに集中し、「肚」が空っぽになっています。その空いたスペースに、妖怪「おばりよん」は忍び寄ってくるのです。
ふとした瞬間に、お化けのように手首の力をダラリと抜いてみてください。そして、ふぅーっと息を吐きながら、その抜けた力が下腹部(おへその下数センチにある「丹田」)にストンと落ちるイメージを持ちます。
骨盤が自然と立ち、頭が背骨の真上に正しく乗ると、肩の筋肉は「頭を支える」という過酷な労働から解放されます。
その時、あなたの肩にいた「おばりよん」は、驚いて退散していくことでしょう。
結び:東京武揚会で、心と身体の「脱力」を学びませんか
人間の身体は、本当に不思議で面白いものです。
西洋医学(理学療法)の緻密な理論で紐解く身体。
東洋の智慧と武術(八光流柔術)が教えてくれる、力に頼らない身体。
そして、先人たちが身体のメッセージをユーモラスに伝えてくれた妖怪の物語。
これらを融合させることで、私たちはもっと自分の身体を愛おしく、そして快適にコントロールできるようになります。
「最近、肩に何かが乗っているように重い……」
「マッサージに行ってもすぐに肩が凝ってしまう……」
そんな方は、ぜひ一度、八光流柔術 東京武揚会の道場へ遊びに来てみてください。
力尽くではない、人間の身体の神秘的な「脱力の心地よさ」を、私と一緒に体感してみませんか?
道場では、肩こり解消のヒントはもちろん、技の原理やおもしろい妖怪の話を交えながら、初心者の方にも分かりやすく、丁寧に指導を行っております。
あなたの肩の「おばりよん」を、笑顔で驚かせてやりましょう。
皆様のお越しを、心よりお待ちしております。
お問い合わせはコチラ
八光流柔術 東京武揚会
免許皆伝師範 今野芳山



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