【八光流柔術と健康】〜武術が秘める"癒し"の力と、妖怪が教えてくれた身体観〜

私は八光流柔術の免許皆伝師範を拝命する傍ら、理学療法士として高齢者の健康・介護予防にも携わっております。さらに少々変わり種ですが「中級妖怪博士」としても活動しております。今回は、これら三つの視点を織り交ぜながら、「八光流柔術と健康」というテーマでお話ししたいと思います。

■ 八光流柔術とは──"傷つけずに制する"武道


八光流柔術は、初代宗家・奥山龍峰先生(1901–1986)が昭和16年に創始した護身術です。

正式名称は「日本武芸司護身道八光流柔術」。


その最大の特徴は、「経絡(けいらく)への刺激」を技法の中心に据えていること。

相手を打ち倒すのではなく、ツボや経絡を通じて瞬間的に動きを封じ、しかも技を解けば痛みが残りません。


つまり八光流は、武術であると同時に「身体を識(し)る術」でもあるのです。

■ 稽古が「身体を整える」──理学療法士から見たエビデンス


八光流には併修として「皇法指圧(こうほうしあつ)」という独自の手技療法があります。

経絡上に指圧を加えることで、対応する身体部位の健康と生命力を活性化させるというものです。


理学療法士の視点から面白いのは、稽古中に掛け/受けの双方が「身体が整った」「疲れが取れた」と感じる現象です。

これは単なる気のせいではなく、現代医学的にも説明可能です。


近年の研究では、緩やかで意識的な身体運動と呼吸法の組み合わせが、自律神経系のバランス(交感神経と副交感神経)を整えることが報告されています。

例えばある研究では、定期的な運動が睡眠中の副交感神経活動を高め、心身のリカバリーに寄与することが示されています。


また、リズムを伴う有酸素運動が自律神経活動バランスを改善し、運動後のリラックス効果をもたらすことを確認しています。


八光流の稽古は、呼吸 × ゆったりとした体捌き × 経絡刺激という三要素を同時に行うため、まさに「動く自律神経調整法」と言えるかもしれません。

■ 介護予防としての八光流──「ころばぬ先の柔術」


スポーツ庁および厚生労働省の報告書では、高齢者の介護予防において「筋トレ」「転倒・骨折予防」は世界的にもエビデンスが確立しているとされています。

さらに、文部科学省はスポーツグループへの参加が、個人で運動するよりも転倒・介護予防効果が高いことを明示しています。


八光流の稽古は、


- 下肢の踏ん張りと体幹のコントロール → 転倒予防に有効

- 指先・手関節の精緻な操作 → 巧緻動作の維持(認知機能維持にも関与)

- 道場という"共同体"での継続的活動 → 社会的フレイル予防


の三拍子が揃っており、まさに「ころばぬ先の柔術」。

■ ここで妖怪博士が登場──"足元の闇"と転倒予防


さて、ここで妖怪のお話を少しだけ。


日本各地に「すねこすり」という妖怪の伝承があります。岡山県に伝わる、雨の夜に人の脛(すね)の間をこすりぬけ、転ばせるという妖怪です。

あるいは「べとべとさん」は、夜道で背後から足音をつけてくる妖怪。

「送り犬」は転んだ人に襲いかかると言われます。


これらは荒唐無稽な物語に見えて、実は先人たちの「転倒注意」という生活の知恵が妖怪化したものだと、私は考えています。電気のない時代、夜道での転倒は命取り。「妖怪のせい」と語ることで、子どもにも高齢者にも"足元を見よ"という教訓を伝えていたのです。


武術における足捌き(あしさばき)は、重心を低く、視線を保ち、決して足元を疎かにしないことを徹底します。

これは現代の理学療法でいう「ステッピング戦略」「アンクル戦略」にも通じる、まさに転倒予防の極意。


つまり妖怪も武術も文化装置を通じて、「身体を守る知恵」を伝承していると言えるかも知れませんね。

■ 心の健康にも効く──「居着かぬ心」と現代ストレス社会


「居着くな(いつくな)」という教えがあります。心や身体が固まると、技は効かず、ケガをする。これは現代心理学でいうマインドフルネスと非常に近い概念です。


呼吸法を伴う武道的所作は、慢性ストレスによる交感神経優位の状態を緩和することが、複数の研究で示唆されています。

デスクワークやスマホ漬けの現代人にこそ、八光流の「ゆるやかに、しかし芯のある」身体運用は、こころの薬になるのです。

■ おわりに──武・健・怪が交わる場所


八光流柔術は、護身術であり、健康法であり、そして日本人の身体観そのものです。


- 武道家としては「敵を傷つけずに制する」哲学

- 理学療法士としては「自律神経を整え、転倒を防ぐ」科学

- 妖怪博士としては「足元の闇を侮らない」民俗の知恵


これら三つは、すべて「身体と向き合う」という一点で繋がっています。


東京武揚会では、年齢・性別・運動経験を問わず、稽古を通じて健康と護身を両立する道を歩んでいただけます。ぜひ一度、道場の扉を叩いてみてください。きっと、あなたの中に眠る「身体の声」が聞こえてくるはずです。


是非一度八光流柔術の素晴らしい考え方や技に触れてみてください😊

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